2023.10.31更新日

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私立医学部の学費について解説

医学部受験を控える学生やその親御さんにとって、やはり気になるポイントの一つが学費です。中でも私立大学の医学部は、他の学部よりも高額と言われていますので、なおさら心配になることでしょう。実際、日本の大学のうち約77%は私立大学で、約7割以上の大学生が私立大学に通っています。これは医学部でも例外ではありません。医学部を狙う誰しもが私立大学に通う可能性があります。この記事では、私立医学部を受験する場合に備えて、どの程度の資金の準備が必要かをご紹介します。

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1.私立医学部の平均的な学費

私立医学部の平均的な学費は、6年間の総額でおおよそ2,000万円~4,000万円です。私立大学は、国公立大学と異なり学費の標準額が定められていませんので、大学毎にかなりばらつきがあり、学校によって2,500万円程差があります。一番学費の高い大学で約4,600万円となっており、これは国公立大学の10倍以上の金額です。

ちなみに、参考までにある大学の医学部の学費に関して、年間費用の内訳を見てみると、実験実習費 約30万円、施設設備金 40万円、教育充実費 1,000万円、後援会の年会費 15万円、その他維持費用や災害保険料などとなっています。大学によって項目や割合は異なりますが、ざっくりとした内容はほぼ同じです。

また、学費の安い大学は受験する人が多く倍率が高い傾向にあります。ある大学が学費を1,000万円程下げた際には、その大学の受験者が以前よりもかなり増え、その結果倍率が上がったというデータもあります。反対に学費の大幅値上げを行った大学は、志願者数が減り倍率も下がりました。学費と倍率は反比例しているのです。

医師不足と言われる近年では、そういった背景を利用して、優秀で将来有望な学生を獲得する為に学費を下げる私立大学が増えてきています。十数年ほど前からこの傾向が現れ始めており、複数の大学が次々に学費の値下げを実施しています。6年間の学費の総額が2,000万円を切る大学が新設されるなど、今後も医学部受験生に注目を集めることを目的に価格競争が続いていくだろうと言われています。

2.私立医学部の学費が高額な理由

私立医学部の学費が高額に設定されている理由には、様々な背景があります。

まず、「初期研修医の育成費用を賄う為」という理由があります。

医師になる手前の初期研修医の教育には、1人当たり平均で5,000万円~1億円かかると言われています。医学部の教団に立つのは、教授、助教授、准教授、助手ですが、その職員のほとんどは医師が担っています。医師の中でも指導を行う人材は限られており、その分人件費が嵩みます。また、医学部では解剖や実験を頻繁に行いますので、実験器具代や材料代などといった費用もかかってきます。解剖や実験に使用される機材には、貴重なものもあるので単価が高いものも多く、1つ1つの実験費用が高いです。このように高額な「人件費」と「実験費」が合わさり、研修費用が莫大な金額になってしまいます。つまり、医師1人を育成するための費用を考えると、いくら高額な学費を受け取っていると言っても、大学側は赤字になっている可能性があるのです。その不足分については、国や自治体からの「助成金」という交付金や、大学病院の収益、病院関係者からの寄付金で賄われています。

もう一つの理由として、「病院の経営資金に回している為」というものもあります。大学病院を開院することで医学部を持つことが出来るようになりますが、大学病院の経営を続ける為には、莫大な設備費や高額な研究費用が発生します。一見潤っているように見える大学病院の財政状況ですが、資金繰りに悩まされている病院もあり、学生の支払った学費の一部を経営資金に回すという手段に出ている大学病院もあります。病院で使用されている医療機器はどれも高額な物が多く、1台で数億円するものも少なくありません。大学病院の場合には、特に最新の機器を充実させて患者を安心させる為に莫大な費用を医療機器に費やしています。また、珍しい症例に関する対処法や新しい治療法、最先端の技術開発なども高額な費用がかかります。国から支払われる助成金だけでは、賄いきれない研究費用も大学病院にとっては大きな出費となるのです。

3.私立医学部の学費以外にかかる費用

学費以外にかかる費用として、例えば、教科書代や教材費が挙げられます。特に医学部の場合は、教科書の内容がより専門的なものになっているので、単価が通常の教科書よりも高額でおおよそ3千円~1万円となっています。全てを新品で揃えようとした場合、1年間で約10万円以上かかるため、6年間で総額60万円程の負担になります。ただ、教科書に関しては、大学にもよりますが、強制的に購入させる大学は少なく、授業は配布される資料を元に進められる場合が多く、先輩からもらうなどの工夫をすることができます。ただ、聴診器や白衣、解剖セットなどといった実験用具は自分で調達する必要があります。こちらも教科書同様に、費用を抑えたい場合には、図書館で借りる、医学部の先輩から譲り受ける、友達とシェアするなど工夫して乗り切ることができます。

また、実家から離れた大学に通う場合には、寮や一人暮らし費用が発生します。寮の場合には、アパートやマンションを借りるよりも家賃や食費を安く抑えられる傾向にありますが、寮のある大学は限られています。一人暮らしをする際には、まず家具や家電などを入居の際に揃える必要がありますので、引っ越し代や敷金、礼金、保険料も含めて初期費用が平均で約50万円かかってきます。さらに家賃や食費、光熱費、水道代といった生活費も月に数万円かかりますので、医学部6年間で合計すると720万円程の費用が必要になる計算になります。もし都内の私立大学に通う場合には、家賃がさらに嵩み、生活費だけで6年間で約1,000万円となる可能性もありますので、その点も留意しておきましょう。さらに電車やバスで通学する場合には交通費もプラスされます。学費や学力の問題もあるかもしれませんが、出来る限り自宅から通える範囲の大学を選択すると良いかもしれません。

さらに、医師になる為には、「共用試験」と「国家試験」を受ける必要があり、それに伴う試験費用も自己負担となります。医学部5年生で始まる臨床実習を受ける為に、「共用試験」を受ける必要があります。これは、まだ医師ではない医学部生の医師としての素質を見抜く試験で、技能や知識、態度で評価されます。試験はCBTとOSCEという2種類が実施され、必要な水準を満たした場合にのみ合格となります。4年生の後半に受けることが多く、費用は2つ合わせて2万5千円です。さらに、医師になる為には医師国家試験の受験が必要になりますが、その対策の為に参考書を購入したり、模試を受けたり、試験対策用の講座を受けると20万~30万円かかってきます。実際の試験の受験費用は1万5千円、医師免許の登録に約6万円の費用が発生します。

4.私立医学部の学費を抑える方法~奨学金や地域枠~

お金持ちや医者の二世でないと入学出来ないなどと囁かれることもある私立医学部ですが、医師不足と言われている中で、民間団体や大学、国、自治体が運営する様々な経済的サポートを受けることができます。その中で医学部が利用出来る奨学金や制度を5つご紹介します。

1つ目は、一般的に広く利用されている、ある独立法人が運営する、学習意欲があるのに経済的理由で修学する事が出来ない学生向けの奨学金です。無利子の第一種奨学金と利子付きの第二種奨学金があります。第一種奨学金は月額3万円~6万5千円を借りることが出来ますが、無利子なので審査基準が厳しく利用出来るかどうかは実力次第となっています。第二種奨学金に関しては、月額3万円~1万円単位で16万円まで借りられます。在学中は無利子で、卒業後も0.1%程度の利子になるので、他よりも安く借りることが出来ます。第一種と第二種を併用する事も可能で、返済は卒業後20年間までとされています。

2つ目は、国が運営する教育ローンです。一括で350万円まで借りることができ、医学部入学前から利用可能なので、入学金の支払いなどに活用されることが多いです。在学中は利息分のみの返済でよく、卒業後15年間以内に完済することが求められます。教育ローンには、国のもの以外に銀行が運営するものもあり、世帯収入が高く、返済能力があると認められる程融資される金額も高くなります。教育ローンは、カードローンなど一般的な借金と比べると金利が安く借りられるのがメリットです。

3つ目は、大学独自の奨学金や特待生制度です。入学年度や大学によってその詳細は大きく異なる場合がありますので、事前の確認が必須となります。具体的な例を挙げますと、年間一定額を給付される場合や、生活費分の貸与、6年間で1千万円を減免されるなどの措置があります。入学後に申請をしますが、審査は入試の成績や面談、家計状況から判断されます。特待生制度では、貸与ではなく給付という返済の必要がないパターンも多くありますので、学生にとっては嬉しい限りですが、募集枠は年に数十名のみですので、利用できる確率は低いのも現実です。入試の結果や学業成績が良く、自信のある学生は申し込んでみましょう。

4つ目は、少年院や刑務所、拘置所などの矯正施設の医師である「矯正医官」を目指す学生の為に貸与される奨学金制度です。対象となるのは、医学部医学科の第3学年以上の学生で、月額15万円を貸与してもらうことが出来ます。こちらは矯正医官として一定期間働くことで返済が免除される仕組みになっています。しかし、卒業後に進路変更し数年で矯正医官を辞めるまたは、矯正医官にならない場合には返還の義務が発生します。

5つ目は、自治体の奨学金です。各自治体が独自に設けている奨学金制度で、「地域枠」とも呼ばれています。地方の医師不足が深刻化していると言われる中で、2007年に政府が対策として打ち出したのが始まりで、地域医療に携わる医師を集める為に学費を貸与する制度です。卒業後9年間は、自治体が指定する病院や医療機関に務めることで返済を免除されます。大学と自治体が連携して設置している場合が多く、特に医師の足りていない科(小児科や産婦人科など)を自治体側が指定してくることもあります。勤務希望の科がある場合には、希望通りにいかない場合もありますので、留意しておく必要があります。またこちらの制度も「矯正医官」と同様に、途中で勤務する病院や科を変えるまたは、卒業後医師にならない場合には奨学金の返済義務が発生します。

ここで挙げた例以外にも、支援の手は様々ありますので、一般家庭でも私立医学部を目指すことは十分に可能です。ただ、奨学金に関しては借金ですので、返済期限や条件をしっかりと確認する必要があります。勤務する病院や所属する科を第三者に決められてしまうケースもありますので、将来の自分のビジョンをしっかりと持つことが重要になります。受験勉強で頭がいっぱいになっているかもしれませんが、高額な奨学金を借りるからにはそれなりの覚悟と今後への準備が必要です。

5.まとめ

「私立大学の学費は高い」と漠然とイメージしていた方も、大学によって学費には大きな差があり、なぜ高額なのかお分かり頂けたのではないでしょうか。少子高齢化に伴い、医師不足が叫ばれている世の中では、大学側も奨学金や特待制度を設け、学費を下げるなどして対応しなくては、優秀な医師を獲得し育成することが出来ません。

現代の医学部における学費問題は偶然にも工夫次第で乗り切れる時代になっているのです。入念に下調べをして、受験における不安はすぐに解消しましょう。

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